この記事ではろ過バクテリアについての、専門的な知識をご紹介します。
ちょっと難しい話になりますが、好気性菌・嫌気性菌といった名称で呼ばれるろ過バクテリアについて深堀します。
エビの飼育に欠かせないバクテリアの働きと種類
濾過バクテリアの深掘りを始めていきます。今回は、『濾過バクテリア』の『好気/嫌気性』の特徴についてです。
まず知識として。『バクテリア』と『細菌』は同じものですので覚えておいてください。(ちょっと脱線しますが、『ウイルス』は別物です。)
アクアに詳しい方なら言葉として、『好気性菌』とか『嫌気性菌』など聞いたことあると思います。でも実は、生物学的に言うとこれは違っています。
まず、水の中では『好気性菌』は生きられないからです。
『好気性菌』とは…主に土壌などのごく表面などだけに存在し、酸素呼吸し有機物を分解する働きがある細菌を指します。
すなわち、水中では酸素量が足りずに生きられません。
水の中に存在するのは、『嫌気性の細菌』ということになります。
(例外的に、上部濾過のウールの乾燥している部分などには『好気性菌』がいる可能性はあります)
じゃ、なぜアクア業界では『好気性』や『嫌気性』という言葉が使われているのか。
それは『嫌気性細菌』と一言で言っても実は、細かく分類できるからです。
好気性菌?嫌気性菌?3つの嫌気性菌
『嫌気性細菌』の中でも、アクアリウムで関係あるレベルでのお話だと、『偏性嫌気性菌』と『通性嫌気性菌』そして『耐酸素嫌気性菌』の3つになります。
3つの中の嫌気性最近の特徴を1つずつご説明します。
➀偏性嫌気性菌
ずばり、酸素がある環境では生きられません。
空気に触れるだけで、そこに含まれる酸素により死滅してしまいます。
水の中でも水深の深いところなど、空気の少ない(酸素のない)場所で活動しています。
②通性嫌気性菌
活動に酸素を利用します。ごく微量の酸素でも生きていける菌です。
水田など自然の環境で硝化作用している菌は、ほとんどがこの『通性嫌気性菌』です。
つまり水槽内でも一番多い菌種になります。
③耐酸素嫌気性菌
これは酸素を利用できないが、大気中の酸素レベル(つまり水槽内の水の中の酸素量)でも死なない細菌です。
まず①の『偏性嫌気性菌』ですが、水槽内ではを利用することは一般的には難しいと思います。
水槽内の水には「溶存酸素」が必ず存在してしまうからです。『偏性嫌気性菌』は家庭の水槽内では、生存活動することはないでしょう。
②の『通性嫌気性菌』が、一般的に濾過バクテリアと認識している「ニトロソモナス属(NH4→NO2)」「ニトロバクタ―属(NO2→NO3)」にあたります。
③は一部の脱窒菌などになります。
一部としたのは、脱窒菌は①の『偏性嫌気細菌』もいるからです。
アクアで使われる言葉を整理すると、下記の様になります。
ポイント
『好気性菌』=『通性嫌気性細菌』
『嫌気性菌』=『耐酸素嫌気性菌』
つまり『水の中で酸素を利用できる嫌気性菌』と『水の中の酸素は利用できないが、生きていける嫌気性菌』をアクア用語では『好気性細菌』『嫌気性細菌』と呼んでます。
脱窒菌を維持するのは不可能に近い
また、アクアリウムでいう『嫌気性細菌』に望むことは、主に脱窒になると思います。
③の『耐酸素嫌気性菌』に属する脱窒菌も、一般的に使いこなすのは非常に難しいと考えます。
しかしながら、大がかりな施設ではメタノールと反応させて、脱窒するのに使用している場合もあります。
urushiも魚の養殖研究施設で試験運用した経験がありますが、硝化によって出てくるNO2やNO3に『偏性嫌気性細菌』の活動が追いつかず、NH3などが溜まってしまいました。
脱窒は生体が高密度で高栄養下では、相当大きな設備がないとバランスが取れないということを学びました。
自然界では広大な面積で脱窒作用が行われ、水中の生態系が維持されているということです。
上記の経験からも、一般家庭で『耐酸素嫌気性菌』も使いこなすのは、非常に難易度が高くなると思います。
脱窒ができないので、どれだけバクテリアが働いている水槽でもアンモニアの発生がある水槽(=生体が存在する水槽)では換水が重要になってきます。
ポイント
脱窒作用は家庭用水槽では不可能=換水が必要
濾過バクテリア:『好気性』『嫌気性』の特徴 まとめ
この記事では「濾過バクテリア:『好気性』『嫌気性』の特徴」について書きました。
好気性菌・嫌気性菌とアクア用語では使われますが、じつは厳密にはアクアでいうところのバクテリアはすべて嫌気性菌です。
嫌気性菌には『偏性嫌気性菌』と『通性嫌気性菌』そして『耐酸素嫌気性菌』の3つがいて、脱窒を行うのは『耐酸素嫌気性菌』です。耐酸素嫌気性菌を一般的なアクアリウムの水槽で働かせるのはほぼ不可能なため、水質維持には換水が必要となります。
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